「保育士の仕事」と「腰痛」は切っても切れない関係です。そして、保育の仕事を長く続けようと思ったら、腰痛対策は必須です。
この記事を読んでくださっている保育士の方の中には、すでに強い痛みを感じている方や、まだ軽い腰痛しか経験してはいないけど「いずれもっと腰にくるのでは・・・」と気にしている方が多いでしょう。
そこで今回は、腰痛にまつわる様々なこと、いろいろな保育士が実践している工夫や、労災認定のこと、転職する際の注意点などご紹介していきます。
1.腰痛は保育士の職業病!コルセットをして働いている人が多い
現実問題、私の周りには腰痛を抱えて働いている保育士はとても多く、「腰痛は保育士の職業病だ」と日々感じさせられています。
常勤保育士に限らずパート保育士でも、腰痛を抱えている方もいます。
園児と接している時、保育士は、目線を合わせるためしゃがんだり、中腰になったりすることが多く、それが腰を痛める原因になります。
また、保育士はひとつの部屋で食事・遊び・昼寝とすべてのことを行うため、食事のたびに重たい机を出してまた片付ける必要がある園も多く、日々、腰に負担がかかっているのです。
乳児クラスの保育士は特に腰への負荷が大きい
乳児クラスの保育士の場合、
- 「抱っこ」が多い
- 歩き始めの子を支えるために中腰で歩く必要がある
- 手をつないでの散歩の時は少し腰をかがめない
といった特徴があるため、他のクラスの保育士よりも腰への負担が大きいと言えるでしょう。
乳児クラスの保育で、腰への負担が蓄積されていっているのを感じます。
私は現在、乳児クラスの保育士を担当していますが、やはり腰への負担は大きいなと感じます。
特に歩き始めた子の手をつないで一緒に歩くのは、たくさんしてあげたいのですが、どのような姿勢をとっても腰が痛くなるので難しいです。
食事も、幅の広い机を使っているうえに、少し遠くに座っている子にも手を貸すことがあるため無理な姿勢を取らざるをえないことが多いです。
私の場合はときどき腰の痛みを感じるという程度ですが、負担が蓄積されていっているのだろうなと思います。
腰痛のある保育士はコルセットを着用し無理して働いている
私の勤めている園で腰痛を持っている保育士は、コルセットを巻いて働いている人が多く、傍から見ても「無理して働いているなぁ」と思ってしまいます。
そのうちの一人の保育士の方は、ここ数年で腰痛がひどくなったそうです。
整骨院では、腰痛がひどくならないように腰を鍛えるように言われているそうですが、痛みがあるのでトレーニングなどもできず、ストレッチと仕事中にコルセットをつけることで耐え忍んでいるとのことです。
コルセットを着けられるのは涼しい時期だけ・・・・
ですが保育士がコルセットを着けられるのは涼しい時期だけです。
夏はさすがに暑く、ずっと空調の効いた部屋にいるわけではないので、どうしても蒸れてしまうそうです。つまり、6月~9月、1年の約1/3は着けられないので、無理して保育士をしている期間も長いとのことでした。
腰痛が原因で退職する保育士もいる
残念ながら、腰痛で退職する保育士もいます。常勤からパートになる保育士もいれば、保育の仕事を辞めてしまう方もいます。
特に年配の方は、保育の仕事を続けるかどうかが「腰がもつかどうか」にかかっているという方もいます。
私の友人の保育士は、働き始めて8年目に腰痛が急に悪化し、椎間板ヘルニアなどになったら普段の生活にも支障が出るのではと思い、退職を決めました。
退職してパート保育士になってからは腰痛も落ち着いてきたそうで、やっぱり体を大事にしてよかったとは言っていましたが、働き始めの頃からきちんと対策していればと悔しそうでした。
2.保育士の腰痛は「労災認定」されるのか
保育士の腰痛は、必ずしも労災認定されるわけではなく、個別のケースによります。
そのため、労災認定を受けることを検討されている保育士の方は、ご自身での判断は避け、都道府県労働局や労働基準監督署などに相談するようにしてください。
なお、厚生労働省が「腰痛の労災認定」というリーフレットを発行しているので、ここではそれに沿って、腰痛の労災認定について簡潔に解説していきます。
(1)「災害性の原因による腰痛」の場合
厚生労働省の認定基準では、労災認定される腰痛を「災害性の原因による腰痛」と「災害性の原因によらない腰痛」の2種類に区別しています。
まず「災害性の原因による腰痛」とは、仕事中の突発的な出来事により、急激な力が作用して腰を負傷し、腰痛が発症したり、腰痛が悪化したりしたものです。
保育士の場合、例えば
- 子どもをかばおうとして転んで腰を打った
- 狭い倉庫で無理な姿勢のまま重たいものを持ち上げようとした
などが該当します。
ポイント

「災害性の原因による腰痛」は、業務上の出来事が原因で腰痛が起こったことが明確であるため、労災認定を受けやすいです。
(2)「災害性の原因によらない腰痛」の場合
一方、「災害性の原因によらない腰痛」とは「日々の業務による腰部への負荷が徐々に作用して発症した腰痛」とされています。
保育士の多くが悩む腰痛は、こちらのタイプですね。筋肉の疲労を原因とした腰痛、骨の変化を原因とした腰痛とに区別されますが、いずれも以下のような基準があります。
- 約20kg以上の重量物を繰り返し中腰の姿勢で扱う業務
- 毎日数時間、腰にとって不自然な姿勢を保持する業務
- 長時間立ち上がらず同一の姿勢を維持する業務など
保育士の場合は、20kg以上の子どもを抱っこすることはほとんどないでしょう。
不自然な姿勢をとることはありますが、数時間にわたって保持することもありません。
また、長時間立ち上がらないということもないので、保育士の腰痛が「災害性の原因によらない腰痛」で労災認定されることは難しいでしょう。
「保育業務と腰痛との関連が認められるかどうか」も認定のポイント
とはいえ、保育の仕事が腰に負担のかかるものであることは、一般的に十分に受け入れられる事実です。
上記の認定条件にぴったりあてはまらなければ認定されないというわけではなく、ケースごとに判断されるそうです。
例えば、まとまった期間仕事を休むと症状が改善し、勤めはじめるとまた悪化するなど、保育業務と腰痛との関連が認められるかどうかなども、認定のポイントになります。
保育士の腰痛が労災認定された事例について
平成10年2月16日の大阪地裁の判例では、保育士の頸肩腕症候群と腰痛が労災認定されています。
その保育士は障がい児を担当しており、肩や腕、腰に相当の負担がかかっていたそうです。
仕事の負担の内容や程度、腰痛の症状がどのように変化していったかなども加味しての裁判所の判断だったようです。
3.今日から実践!保育士の腰痛対策について
先に、腰痛を抱える保育士の実態や、腰痛の労災認定についてご紹介していきましたが、何はともあれ一番大切なのは、日頃から腰痛対策を講じ、「腰痛を発症させない」「腰痛を悪化させない」ようにすることです。
(1)コルセットはやはりおすすめ
保育士の仕事内容を考慮すると、腰の痛みを感じていなくても予防のために日頃からコルセットをしておくことは、とてもオススメできます。
コルセットの「支え」があると園児を抱っこするのも楽ですし、無理な動きができなくなるので、保育士の仕事中も自然と腰に負担の少ない動作ができるようになります。
コルセットは薬局やインターネットなどでも簡単に買える
コルセットは整形外科などで処方してもらうこともできますが、薬局やインターネットなどでも簡単に買うことができます。私は薬局で相談して、自分に合うサイズのものを選んでもらいました。
(2)腰に負担のかからない姿勢で床に座る
保育の仕事では床に座ることが多いですよね。
この時は、
- 正座
- 立て膝
で座ると、腰へ負担がかからないと言われています。
どちらも、背中を伸ばして座ることが重要です。
また、「あぐら」や、正座を崩した「横座り」は体重が片方に偏ってしまうので腰によくありません。
腰痛の程度によって、正座は辛いかもしれませんし、取れる姿勢も変わってきますが、重要なのは「左右どちらか片方に体重を偏らせない」「前屈みにならない」ことです。
ご自身の体にとって楽な座り方を探すようにしましょう。
(3)腰に負担のかからない姿勢で保育する
保育士は抱っこするときや、おむつ換えのとき、背中を丸めたり、腰を反らせたりしていることが多いのではないでしょうか。
これはどちらも腰によくないので、背中はできるだけ自然にまっすぐ伸ばすようにしましょう。
私は抱っこのとき、無意識に腰を反らせていたようです。先輩保育士に指摘してもらって、はじめて気がつきました。
大きな鏡など保育室にない園が多いので、お互いに姿勢をチェックし合えるといいかもしれないですね。
重心を下にもっていく姿勢で立つ
ただ猫背や反り腰をやめただけでは、いままで腰や背中で支えていた分の負担が腕や肩にくることになってしまいます。上半身はまっすぐのまま、軽く膝を曲げ、体の真下に自分の体重がすとんと落ちるようなイメージで、重心を下にもっていく姿勢で立つと楽です。
すでに腰を痛めている保育士の方には難しいかもしれませんが、どうしても立って抱っこする必要があるときには試してみてください。
中腰になるのではなく座ってしまう
中腰で上半身をかがませるよりは、座ってしまったほうが腰への負担は少なくなります。私もついつい中腰になってしまうのですが、座ったほうが子どもと向き合いやすくもあり、いいなと思います。
(4)休憩時間にストレッチする
ストレッチも保育士の腰痛には有効です。腰をひねる動きや、伸ばす動きを、ちょっとした空き時間に行っているだけでも帰宅してからの疲れ具合がかなり違います。
ときには子どもと一緒にやってみるのもいいですよ。大人の動作を模倣するというのは、子どもにとってはそれだけで十分おもしろい遊びになります。一緒にストレッチしちゃいましょう。
(5)腰に負担がかからないように保育室の環境を整える
腰に負担がかからないように保育室の環境を整えるのもひとつの対策です。
特に乳児クラスでは様々なものを子どもの手の届かない高さに置いていることが多く、重たいものを頻繁に上げ下げしなければならないこともあります。
年度はじめに部屋の使い方を決めるときに、保育士の動作についても考えておくといいと思います。重たいものは、子どもが触れないようにしたうえで低い位置に置くなどの工夫ができるといいですね。
以前勤めていた園での体験談
以前勤めていた園では、机を頻繁に出し入れするのを止めてみました。基本的に出しっぱなしにし、使わないときは机を端に寄せて囲いをつけることにしました。机の脚にはキャスターがついているので、持ち上げなくても移動できます。それでもかがみながら移動させるのは少し腰に負担がかかりますが、たたんで持ち上げて運ぶよりはかなり楽でした。
囲いは段ボールにきれいな布を貼ってつくり、子どもが外したり倒したいできないように工夫しました。囲い自体が子どもにとっておもしろいものになるように、鏡のように顔が写る紙を貼り付けてみたり、ときは大きな紙を貼り付けてダイナミックにお絵かきをしたりと活用していました。
介護技術の書籍も参考にしてみよう
介護技術の書籍なども、保育士の腰痛対策にとても参考になります。介護の現場でも、腰痛を抱える職員は多いそうです。
保育では、子どもに対する動作などの書籍も研修もほとんどありませんが、介護は成人を相手にするため、どのような姿勢で、どのような動作で介護するかというレクチャーはとても多いです。そのまま参考にはできませんが、基本的な考え方を学ぶことで姿勢に対する意識が変わります。上記の抱っこの姿勢も、介護の書籍を参考にしました。
4.腰痛を抱える保育士が転職する際の注意点
最後に、腰痛を抱える保育士の方が転職する際の注意点をご紹介していきます。
(1)面接で腰痛のことを伝えておくこと
面接では必ず現在の腰痛の状態を伝えておきましょう。
採用に不利だからと言わないでいると、保育士として働き始めてから無理をしなければならなくなってしまいます。採用になってから伝えるのも、信頼を損ねることになってしまいます。
保育の仕事をしていれば腰痛を抱えてしまうのは当然のことです。思い切って面接で伝え、具体的にどのような業務なら可能であるか相談しましょう。長く働くためには必要なことです。
ポイント

腰痛で転職した私の友人の保育士も、面接で腰痛のことは伝えたそうです。親身に相談に乗ってくれ、そのうえで不採用となった園もありましたが、そもそも勤め続けられない仕事に就いても意味がないので、かえってよかったと言っていました。
(2)小規模園への転職は避けること
腰痛を抱える保育士が、乳児のみの小規模園へ転職するのは避けた方が良いでしょう。
長年、乳児ばかりを担当することになるので腰への負担は大きいです。
パートとして転職する場合は予め仕事内容をきちんと確認すること
ただ、大規模保育園であってもパートへの転職を希望しているのであれば、配属されるのは圧倒的に乳児クラスが多いです。
乳児のほうは手がかかり、幼児はそれほどパートが入る必要がなかったりもするためです。求人では時間帯とおおまかな仕事内容しか書かれていないことが多いので、電話や面接の際にあらかじめ具体的な仕事内容をきちんと確認するようにしましょう。
思い切って主任・園長募集の求人に応募するのもアリ
保育士としてのキャリアが長いのであれば、思い切って主任・園長募集の求人に応募するのもいいと思います。担任外になるので子どもと接する機会は減りますが、体への負担が少なく、保育の仕事を長く続けることができます。
まとめ
保育士の方は、腰痛がひどくなってもやはり「保育の仕事がしたい!」と頑張って続けておられる方も多いと思います。
そういった保育士の方は、無理せず続けられる環境を探したり、いま勤めている園で工夫を凝らしたり、それぞれに腰痛を向き合いながら、保育の仕事を続けるようにしてくださいね。
そしてまだ、腰痛になっていない保育士の方も、この仕事を続けている限り、腰痛のリスクは避けられませんので、日頃からしっかりと対策をとるようにしてください。
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